「どうで死ぬ身の一踊り」西村賢太(講談社文庫)

どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)
私小説。作品どおりの人だったら編集者大変だろうなぁとか余計な心配をしてしまいました。中卒で親父が犯罪者で自身も酒乱で暴力沙汰を繰り返し同居する女性にたかりつつ手を上げる男、彼は古書マニアで、ある無頼作家に入れあげて古雑誌原稿私信やがては墓碑代わりの木片まで入手し、資金は女の稼ぎとその親からの借金だが全集を編纂するといいつつ墓参を繰り返す。外面は良いつもりの、自分が我慢してやってるんだと繊細ぶる尊大さが女との些細ないさかいで爆発し、女が出て行けばその足元になめくじのように這って許しを請いその反動はより大きく…というどうにも行き場のないナマの感情を繰り返しぶつけられるのがやっかいで読み進むのにつらく、だけど思い当たるフシもたくさんで身につまされて声にならない悲鳴をあげてしまうような困った作品だった。