「クラッシュ」太田哲也(幻冬舎文庫)

98年にFISCOで発生した雨天レース中のクラッシュ、燃え上がる炎が一面を禍々しく覆うトーチュウを当時の同僚と無言で眺めた記憶がある。
その炎の中にいた作者が綴った生還の記録。肉体と精神の苦痛はやがてもう一つの“クラッシュ”によって救われてゆく、その過程のほんの始まりまでが描かれている。
強さも弱さも全てが人間らしさとして肯定される、清々しい明るさに満ちた、根っ子のところで元気を呼び覚ましてくれる作品。