「フェルマーの最終定理」サイモン・シン、青木薫訳（新潮文庫）

3世紀に渡って解かれることの無かった難問に挑んだ数学者たちの軌跡。そもそもの議論の土台となる数論のなりたちから、その謎を提出したフェルマーの生涯、そして現代に生きる現役の数学者アンドリュー・ワイルズの苦悩と栄光まで、丹念に積み上げられる美しい物語にひたすら興奮しました。
なじみの無い名前がよくわからない実績を達成していくプロセスはもしかしたら退屈かもしれませんが、慣れれば全然大丈夫。とにかく数式の少なさは呆れるほど、物理の博士号を持つ筆者の理解の深さとジャーナリストとしての割り切りの良さ、そして的確な文章力と、人に対する感謝と愛情の深さにただただ感動。
名前だけは知ってた「谷山＝志村予想」がこんなに重要な役割を果たしていたこと、あと彼ら日本人数学者のドラマチックな人となりを英国人の筆者に教えられたことは、恥ずかしさを覚えつつ感謝したいっす。