「とべない沈黙」監督・脚本:黒木和雄

ラピュタ阿佐ヶ谷にて。加賀まりこスペシャル。
北海道で少年が捕まえた蝶は九州にしか存在しないはずのナガサキアゲハだった。大人たちに疑いの目を向けられる少年は蝶を石狩川(かな)に捨ててしまう。舞台は長崎にうつり芋虫がなぜ北海道にたどりついたのかをカメラは追っていく―
さなぎから羽化する蝶のアップからはじまり蝶の死骸で終わる昆虫映画。長崎、萩、広島、大阪と芋虫が移動していくロードムービーでもある。汽車の窓から捨てられた芋虫がめげることなく線路の上を這う、その後方から迫る汽車。汽笛と通り過ぎる汽車の次のカットで線路の側面を這っている芋虫。というシークエンスにはハラハラしつつ笑わされた。大阪から香港、そして東京とスケールは拡大。自衛隊の戦車が街中を走るシーンには驚いた。資料映像なのかなんなのか。
加賀まりこは各土地に出現する「蟲を愛でる姫君」という役回り。というか蝶の化身か。