「時代観察者の冒険」小林信彦(新潮文庫)

とんねるずを「荒涼たる七十年代の電波メディアが生み出した妖怪」とする一文を読んで思ったこと。
「テレビの黄金時代」のパロディで時代の寵児となったとんねるず。ビデオの無い時代、記憶力と番組を取捨選択するセンスを頼りにした「分かるやつだけ分かればいい」という態度が高校生だった自分には新しかった。
なんといっても面白かったのがオールナイトニッポンで時折暴走する思い出話。帝京高校の鼻が大きい同級生について恐らく当時の声色で「ち、ち、ちんぽっぱな」とか二人がゲラゲラ笑ってるのを深夜布団の中でいっしょに笑ってた。あと憲武があまり面白くないハガキを読み方で強引に笑わせたあと「トーンで笑わせるなよ」と貴明が笑いながら突っ込むとか、二人が売れなくなって「昼間のラジオでジジイババア相手にやるんだぜ」とか悲しくて可笑しかった。
書きながら思ったが、二人にしか分からない思い出話を二人で笑ったり暗い将来をネタにしたり、意外とダウンタウンとの共通点がある。
70年代テレビというバックボーンすら無しにセンスのみで「分かるやつだけ分かればいい」という笑いを導入したダウンタウンの登場は、(主に東京では)実はとんねるずによって地ならしされていたのかもしれない。
芸人が舞台で笑い出してしまういわゆる「吹く」ことはあってはならないことらしいが、とんねるずダウンタウンも彼らが笑うところで見ている側も安心して笑えるというところがある。余談だがとんねるずはそんな観客に甘え、ダウンタウンはそんな観客を嘲笑してる気がする。